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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

 車に近くまで来ると、車から楓先輩が出てきた。

(あ。先輩だ…一人?歩睦まだ寝てるの?)
「楓先輩!」
 小走りで先輩の方に近づく遥香。


「あら、菜の花さん」
 楓が“なにかしら”の顔で遥香を見る。

「菜畑(なばた)です!」(もうワザとでしょ!)
 遥香は心の中で突っ込みを入れる。

「あら、そうだったかしらぁ」
 楓は笑顔で応対するが、その目に優しさがない。

(この人苦手…)
 遥香は、苦笑しながら話をし始める。

「あ、あの?歩睦…起きました?実君が待ってるんですがぁ?」
 遥香が、土居家族の方をチラッと見る。

 実が手を振っている。


「起きてると思うわよ!声かけたら?」
 挑発的な態度の楓。

(歩睦が起きなかったから、機嫌が悪いんだ…寝つきは良いくせに、さっと起きないのよね…)
 楓の行動を遥香なりに解釈する。

「はーい。そうします!」
 遥香は、楓の提案に素直に従う。


「歩睦!入るわよ!」
 遥香がスライドドアに手をかける。


 ピリッと静電気のような違和感があった。
 遥香は気にせず、スライドドアを開ける。

 中はカーテンを引かれ、薄暗い。

 歩睦は後部座席に座っていた。

「なんだ!起きてるじゃない?」
 遥香はフッと笑って、車の中に入る。


「遥香…」
 歩睦が小さい声で呼ぶ。

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