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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

「なぁに?」
 遥香は良く聞き取れなかったので、歩睦の直ぐ前まで近づく。

「!」
 歩睦がいきなり顔をあげる。

 その顔は今にも泣きそうな顔。

「ど…」
 遥香が「どうしたの?」と聞こうとした瞬間。

「遥香!」
 歩睦が遥香の体をグイッと引き寄せ抱きしめる。

「きゃ!」
 歩睦の顔が遥香の胸の辺りに当たる。

「遥香。よかった…」
 歩睦の抱きしめる力がドンドン強くなる。


「ちょっと、歩睦!どうしたの?は、離して!恥ずかしいよ」
 遥香は、車の中でも抱き締められると恥ずかしい。


 遥香は、歩睦の肩が小刻みに揺れていることに気がつく。


「泣いてる?」
 遥香が聞く。

 無言で頭を横に降る歩睦。

「試合お疲れさま。試合の応援…行けなくてごめんね。
お店が急に忙しくなって…」
 遥香は、歩睦の行動を‘約束を破ったせいだ’と解釈した。

「……」
 歩睦は何も言わない。ただ、抱きしめている。

「だから“バーベキューをする”って聞いたから、準備して待ってたのよ」
 遥香の優しい声でギュっと抱きしめ返す。


「……」
 歩睦は何も言わず、遥香を見上げる。

「優勝おめでとう!歩睦は頑張った!」
 遥香がにこっと笑う。

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