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精霊と共に 歩睦の物語

第11章 記憶の…困惑

「歩睦?
どう…したんだ?ブツブツ言ってるけど、なんか飛んでるのか?虫か?」
 涼が心配している。

「え?これ見えない?」
 歩睦が指差す方を涼が素直に見る。

「なにかいるか?」
 涼が不思議そうに首を傾げる。

{ほらね。僕を認識しないし、声だって分からない}
 ユティルは歩睦に近づいて言う。

「見えてないのか…」
 歩睦が小さくつぶやく。

{だから、僕との会話は心で呼び掛けてくれれば…いいんだよ}
 目の前でユティルが微笑んでいる。

(わかった…こんな感じ?)
 ユティルを見つめて声を出さないように心で思う。

{そう!そんな感じ!}
 ユティルの親指が上がる。


「歩睦?おーい歩睦くーん!立ったまま寝ないでください!」
 涼が歩睦の体を揺する。

「寝てない…そんなに揺すると頭痛くなる…」
 歩睦が涼の腕を払う。

「頭痛い!熱でもあるのか?」
 涼が歩睦の額に手を持ってくる。

「…―ん…熱はないな!」
 自分の額と触り交互にさわる涼。

「涼…恥ずかしいから、やめて!大丈夫だよ」
 寮の掌も払う歩睦。

「そうか、そういうならいいけど」
 はははっと笑う涼。

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