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精霊と共に 歩睦の物語

第2章 少しずつ動き出す輪

「ただいま」
 両手に、スーパーの袋を持って笑う信司。

「どうしたの!?こんなに早く帰ってきて!それに、スーパーの袋持ってるし」
 いつもこんなに早く帰ってこない信司に駆け寄る歩睦。

「お母さんから電話が着てね。「仕事で帰れないから、たまには帰って」って言われたよ、ははは」
 信司はいつもの深夜帰宅を指摘されてバツが悪そうに笑う。

「おかえり、お父さん…今日は早いんだね…」
 実は、信司が持つスーパーの袋を持つ。

「ああ、ありがとう」
 信司は実の頭を撫ぜる。

 実は、たたたっと走って家に入る。

「実くん?」
 表情が気になる。

「父さん、触れないで…」
 歩睦が信司を止める。

「そう、いつもごめんね」
 歩睦と信司は並んで家に入る。



 その晩御飯はスーパーのお弁当だった。


 男三人で食べる晩御飯はなんだか寂しい。


「あー…あのさ…」
 信司は無言で食べる二人の息子に話しかける。

「いつも、父さん遅いから…二人とこうやって話す、機会が少なかったね」
 信司は一所懸命笑顔を作る。

「……そ、そうだね。こうやって男だけで話すのあんまりなかったね」
 その一生懸命さをくんで、歩睦が話にのる。


「いつも本当に遅いよね…父さん。大学で何してるの?」

「仕事だよ」

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