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精霊と共に 歩睦の物語

第2章 少しずつ動き出す輪

「実はお母さんの生まれた家が神社だってことは知っているよね」

「知ってるよ」


 母 景の旧姓は土御門(つちみかど)という。

 隕石がご神体として崇める神社の宮司の娘である。

 昔。300年ほど前
 星山の山頂近くに隕石が落ちた。
 隕石の力に敬意をはらい、落ちた場所に祠(ほこら)を建て崇めたのが、 神社の始まり。
 社(やしろ)は山の麓(ふもと)にある。

 信司は、絵本を読み聞かせるように、実に神社の成り立ちや、お母さんの一族が隕石を採取して崇めているかを話している。

 歩睦が何度も聞いた話だなと思いながら聞いている。


「神社にはとっても大切な事が書いてある古文書がある。その古文書を護るのが、お母さんの御仕事だよ」

「ふーん、古文書ってどんな物?」
 実は素朴な質問をする。

「あの、床の間に飾っている古い紙の手紙みたいな…」
 歩睦が思い出しながら言う。

「あれは、違うけど…あれも大事な事は書いてあるね」
 信司はお茶を飲んでいる。

「具体的に、お母さんは何してるの?」
 歩睦も、疑問を口にした。

「うーん、景さんがどんな事をしているかは、見たことがないから、分からない…」
 信司は、少し寂しそうに言う。

「ケガとかしない?」
 実は今にも泣きそうな顔をしている。

「大丈夫だよ、お母さんは…景さんは強い人ですから…」
 信司は、実の頭を撫ぜる。

「うん…」
 実は、湯飲みに口をつける。

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