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精霊と共に 歩睦の物語

第2章 少しずつ動き出す輪

「他に変わった事はない?」
 信司はホッとして、続けて聞く。

「ほか?ほかは…昼に公園で姿のない声を聞いた…でも、あれは、気のせいかも…」
 首を傾げる歩睦。

「公園…噴水公園?」
 景が聞く。

「うん。今日のお昼は涼とホットドック食べに行ったんだ」

 信司と景は、顔を見合わせにっこり笑った。

「公園…気持ちよかったでしょ」
 景がにこっと笑う。

「うん。天然クーラーって感じだった」
 歩睦は木々の間を抜ける風を思い出す。

「守護地に自分で向かったのか、導かれたのか、どちらにしても、歩睦は護られているんだな…」
 信司は、テーブルの上にある道具の中から一つ手に取った。

「これは『護りの石』だ。肌身離さず持っていろ」
 信司は茶色い石を皮で縛ったペンダントを手渡す。

「えー、これを付けるの?」
 そのペンダントを見ている。

「付けていろ!」
 信司は真剣に言う。

「は、はい」
 強い口調にビックリする歩睦。

「ワイトは、あらゆる生者に対して強い憎しみを抱いて、暴力的に襲い掛かってるはず。一度接触してきたって事は、また来る…誰かが…誰かが、いつも護る事は出来ない。だから、護るものを持っているべきなのです」
 普段の口調に戻る信司。

「そうよ、歩睦。付けていて…」
 景が歩睦の後ろに立つ。

「なに?このなんか変な空気…」
 歩睦は、二人の行動がおかしいと身構える。

「私達が必ず護る。大切な息子…」
 景はふわっと後ろから抱きしめる。

「か、かあさん」
 抱きしめられて、ビックリする歩睦。


  その夜は、これ以上の話はなかった。

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