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精霊と共に 歩睦の物語

第3章 せっかくの休みなのに

「はあ!」
 男の手から力の塊が歩睦にむっていく。

  ギュュゥゥー ドォン!

「ぎゃ」
 歩睦の背中に男の攻撃が当たる。

 歩睦は、公園の芝生に叩きつけられる。

「痛っ」
 体中に痛みが走る。


「弱い、弱すぎる」
 ニヤニヤ笑う男達がどんどん集まってくる。


「く、くそ…」
 歩睦は、必死に起き上がり逃げる。



 何処をどう走ったのか分からないが、建物の裏まで来た。

 建物の壁に片手をつき携帯を確認する。
 圏外になってどこともかからない。
 肩で息をしている状態。
 つばを飲み込んで息を整える。

 やけに、静かだ。
 さっきの男達が全然見えない。


「!」
 急に後ろから現れた手は歩睦の口を押さえて建物の中に引きずり込む。
 必死にもがき抵抗する歩睦。

「暴れないで、歩睦ちゃん」
 聞き覚えのある声。

 自分の口を塞いでいるのが、楓である事に気づく。

(せんぱい!)
 口を塞がれているから声が出ない。

「もう、安心して…私が来たから!」
 楓はそのままの体勢で歩睦を抱きしめる。

(ふぎゃ!)
 声なき声で悲鳴を上げる歩睦。
 この体勢は、さっきまで受けた背中の傷が痛い。

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