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精霊と共に 歩睦の物語

第3章 せっかくの休みなのに

「君は精霊なの?どうして、僕の側にいるの?」

{…僕は…僕の口からその質問に答えられない}


「そうか…わかった」
 歩睦は、これ以上質問をしなくなった。


{以外だぁもっと「なぜ?」って聞くと思ってたのに}


「話せないんだろ?
父さんや母さんもそんな感じだった。
約束の時?定められた時?うーん、そんな感じの言葉で、それ以上説明してくれなかったから…
でも、みんな、僕を大事だって言ってくれた。
僕が何かとても大切な役目があるのか、魔王か勇者か分からないけど、それまでは、普通でいたい…」
 歩睦は精霊に話しているより、自分に言っているように話している。

{歩睦…ほら、出口だよ}


 目の前に光が漏れる小さな扉があった。

「あ、ホントだ」
 歩睦はその扉に向かって進む。


{僕は、いつもそばにいるよ、またね}



  カチャ
 歩睦はそっと扉をあける。
 外から明るい光が目に飛び込んでくる。

「まぶしい」
 目を細めながら、外に出る。


「土居君だね」
 青年が一人近づいてきた。

「あ、はい」

「紅葉の兄です。さ、こちらへ」
 青年は、ワゴンの車に誘導する。

 ワゴンの後部座席に入る。
 中には楓と紅葉と、眠っている涼が乗っていた。

「先輩…紅葉さん…」
 歩睦は椅子に座る。

「もう、あの人来ないから、安心して」
 紅葉がニコッと笑う。

「そうですか…」
 隣の席で、爆眠している涼の鼻を突付く。

「歩睦ちゃんも少し眠って。回復するから…」
 楓が歩むの椅子を少し倒して、蒸しタオルを顔に乗せる。

「そうします。疲れました」

{眠り精霊よ、体と心の回復を}
 楓の手が輝く。

 歩睦はゆっくり眠りにつく。

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