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精霊と共に 歩睦の物語

第3章 せっかくの休みなのに

 目が覚めると、夕方になっていた。

「うーん…」
 目が覚める歩睦。

「お!起きたか?」
 涼の声がする。

「涼!」
 涼の声を聞いて飛び起きる歩睦。

「は、はい」
 いきなりの行動についていけない涼。

「体、大丈夫か?」
 涼の身体をあちこち触る歩睦。

「や、やめろよ。みんな見てる」
 涼が、歩睦から逃げて、楓の後ろに隠れる。

「あ、ごめん」
 周りを見ると、数人の青年が笑っている。

「もう、二人とものびた時はビックリしたわ」
 楓が歩睦の身体を触る。

「楓先輩?」
 歩睦は楓を確認するように見る。

「なに?もしかして、今の状況がわからない?」

「はい…」

「お昼に二人で、紅葉の所に着たでしょ?」

「お昼…?」

「あー、それから、ここに居る兄さん達とフットサルしてたでしょ。その時、歩睦と涼は派手にぶつかって伸びたのよ。紅葉から電話が来たときは、心臓が止まりそうだったわ」
 楓は歩睦をギュっと抱きしめる。

「フットサル……」
 歩睦は腕にある絆創膏に気が付く。

(!これ、あの時、張ってもらったヤツだ)
 楓をもう一度見る。

 楓は、ニコッと笑う。

「みんな。お腹空いてない?」
 紅葉がカートを押しながらやってきた。

「紅葉さん!」
 涼が紅葉に駆け寄る。

「あら、涼君もういいの?」

「はい、ご心配かけました。もう大丈夫です」
 紅葉の押すカートの取っ手を持つ。

「体を大切にしてね」

「はい」
 涼は、紅葉の一言一言に愛を感じでいた。

「楓先輩…」

「なに?」

「なんか話が…」

「涼は、巻き込めない方がいいの!」

「巻き込む…」

「そんな顔しないで!」
 楓は歩睦の頬を両手で包む。

「へんぱい」

「そんな顔してると、チューしちゃうわよ」
 楓は口をトンガラして迫ってくる。

「や、やめて…くだひゃい」
 必死に抵抗する。

「またやってる…お二人さん!紅葉さんが差し入れくれましたよ」
 涼は楓と歩睦の分のホットドックを持って二人に近づいていく。

「たすけれ」

「命令ですか!」

「つがう、たすけれ!」
 涙目の歩睦。

「がんばれ!」
 涼はニカッと笑って手を振る。

「りょうぉぉぉ」



 せっかくの休みの日は、部活よりも過酷な日になった。

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