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精霊と共に 歩睦の物語

第4章 橘様の浴衣の夜会

「今日の花火は、予定通りあるみたい!」
 喜ぶ楓。

(あー今日花火…だから、遥香の顔出てきたんだ…)
 歩睦は手をポンと叩いた。

「どうしたの?」
 歩睦の行動をみて楓が聞く。

「あ、いえ、今日は花火だなって、ちょっと思いだして、はは」
 あえて“遥香”の名前は出さなかった歩睦。

「ホントは花火の事か?浴衣の夜会の事考えてたんだろ?」
 涼が絡んできた。

 今日は氏神様(橘様(タチバナサマ))の浴衣の夜会という地域の夏祭り。
 商店街主催の花火も一緒にする。

『橘様の浴衣の夜会』とは、未婚(15・6歳)の男女が浴衣を着て、氏神神社で火を囲み踊る。集団お見合いようなの事である。
 氏神巫女の『橘姫』が『親同士が決めた婚姻よりも、お互いをまず自分の目で見ることが大切』と、始まったと言われている。

 近年は受験の兼ね合いで、中学2年生の男女が集まって踊る風習になっている。
 基本的に地元の中学生のみだが、飛び入り参加の中2も一緒に踊る。

「ああ、私も一緒に踊りたい」
 楓は、歩睦に抱きつく。

「先輩は去年踊ったでしょ!」
 他の生徒が笑う。

「今日は遥香ちゃんと踊らないとね(笑)」
 涼が絡んできた。

「ば、ばか」
 歩睦が涼の肩を抑える。

「遥香の名前をだすなよ」

「えーだめか?」

「だめだよ!ほら…」
 恐る恐る、楓の方をむくと楓は揺ら揺らしている。

「ううう…同い年に生まれたかった!」
 おんおんと泣きはじめる楓。

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