テキストサイズ

自殺旅行

第5章  四人部屋


午後。

内庭をウォーキング中誰かが倒れたらしく、大慌てで院内に入れられた。患者が自殺未遂か? 病院では、よくある事ではないけれど、別段珍しい事でもない。

いや~~~ね~~・・・・・・どいつもこいつも! 私がこんなにも我慢していると言うのに★

いいなーーーーーーーーーー!!!

部屋に戻ってみた。なに食わぬ顔で。看護師はみんなバタバタと走り回っている。気付かれてはいない。

私は靴のままだ。紐靴のままだ。いけるかな? いけるといいな♪ 靴紐を両足ともに抜いてみた。今なら看護師は私ごときを気にしている暇もないだろう。久しぶりに首に巻いてみた。

あぁ・・・・・・嬉しい・・・・・・嬉しい・・・・・・まだ、逝ける・・・・・・飛びそうだ・・・・・・嬉しい・・・・・・。

両肘と両膝が激しく痙攣し出す。脳味噌がふわりと浮く感じ。

喫煙者なら分かるだろうか、半日や一日ぶりにタバコを吸うと全身に行き渡るような心地よい痺れ。それにも似た感覚が指先、爪先へと・・・・・・。ある意味、気持ちいい。

首絞めプレイや首絞め自慰でそのまま逝ってしまう人もいるが、さすがにそこまでは到達していない★

飛ぶ前に首から紐を外した。もう少し遊ぼうかどうしようか考えていると、看護師が・・・・・・咄嗟に紐を後ろに隠したが、ばれちゃった・・・・・・。

「・・・・・・仮名さん・・・・・・それは没収です・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・」

ああ・・・・・・・取られてしまった。

こんなに早く見付かるとは! くっそ~~~~~~・・・・・・まぁ・・・・・・いいだろう・・・・・・。まだ全然余裕で飛べるから、全然余裕で逝けるから♪

どうやら誰かは未遂に終わったらしい。そりゃそうだ。ここは未遂率が高すぎる。中には成功者もいるようだがそれは相当の強運の持ち主だと私は思う。

私は強烈に強力に運の悪い人間です。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ