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自殺旅行

第3章 独房生活

巡回。

20分~30分置きくらいにその日の独房ゾーン担当看護師が鉄格子越しに見回る。

「変わりないですか?」

声をかけられる。

私は自分の状況が全く! 全然! さっっっっっっっっっぱり!!! 理解出来てないのでどう答えていいかも分からず、視線だけを向けて、

「あの・・・・・・私は、いつ、出られるん・・・・・・ですか?」

相変わらず汚なく不快な自分の声。まだかすれは酷いけど少しずつ音は声に変わりつつある。

「ああ、まだ主治医が決まってない上に、土日を挟むので・・・・・・ゴメンね? あと2日~3日ここで過ごしてもらいます」

あと2日~3日・・・・・・。いまだに薬効果でぼーーーーーー・・・・・・っとする脳ミソ。あまり深く考えられずに返事をするしか出来なかった。

「・・・・・・分かり・・・ました・・・・・・」

昼食もいっさい手をつけられなかった。食欲はいまだ皆無。飲み物すら欲しいと思わなかった。心配する看護師。でも仕方ない。何も欲求が沸かないのだから。

自分は何をしているの? 何でこんな所にいるの?

死にたい。なんで生きているの?

死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい・・・・・・。

床を忙しそうに這い回る幻覚の『蛇』を眺め、聞こえてくる『アレ』な方々の声を聞いて、巡回の看護師に曖昧に頷きながら、そんな疑問ばかりが回らない頭のなかを浮遊していた。

夕食。やっぱりいらない。

手を付けない私に看護師が箸を差し出す。促されるまま箸を握った。

手はまだ痙攣していて力も上手く入らない。

「一口だけでも食べませんか?」

食事を見つめる私。本当にもう要らないんだけどな~・・・・・・。

動かない私に根気強く「一口だけでも」と進める看護師。引き下がりそうにもない。仕方なく、震える手で食事に箸を付けた。

ほんの少しだけ口に入れてみた。

無理です。・・・・・・もういいと、私は箸を置いた。

小さな溜め息が看護師の口から漏れた。

「すみません・・・・・・」

本当にそう思った。けれど私の身体は飲食を受け付けない。

看護師はそれ以上無理に進める事はせず、食事を下げてくれた。

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