恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
顔を上げた先、私の幼なじみの根岸慎之介がいた。
慎之介は野球部で1年ながらもレギュラーに抜擢されてキャッチャーをやっている。
小学校の頃のクラブチームではずっとピッチャーの私とバッテリーを組んでいたこともあり、今も何かと仲良くやっている。
「お前んとこのケーキ屋に予約したいんだけど」
私んとこ、つまり私の実家はケーキ屋兼カフェテリア。
雑誌で紹介されたりと結構人気で遠くからやってくる人もいる。
昔から手伝いをしていたが最近カフェの方も新しくなり、人がたくさんくるようになったため、店の手伝いに駆り出されている。
私が部活に入れないのはそのためである。
「は?自分で直に予約してよ」
慎之介はパチン!と手を合わせて私に向かって頭を下げた。