恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
まあもういいけどさ。
どうして普通にそこを通れているかなんて大体想像つくし。
「あーにしてんだよ、帰んぞ」
そう言って私の方をちらりと見た。
な、なに?
「あらしちゃん襲おうとか考えてたなら止めとけ、蹴られるから」
…その口二度と喋れないようにしてやろうかこの変態。
私からこんな悪態が出なかったのは金山悠が先に翔に話しかけたせい(おかげ)である。
「ごめん!じゃあ帰ろうか!」
パッと脱げていたフードをかぶり直した彼の顔はいつもの可愛いにこにこスマイルを浮かべていた。
「おう。んじゃ、あらしちゃんまたね!」
ばいばーいと手を振って扉の向こうにさっさと消えてしまう。