テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第5章 永遠の別離

「良いんだ。俺はここに残って、先生と子どもたちはあっちに逃げたって役人に言うから」
 ウィギルは自分の後ろを指す。丁度、眼前に三叉路がひらけていた。
「おーい、誰かいたぞ」
 役人の声が次第に近くなってくる。
 もう、猶予はない。迷っている時間はないのだ。
「お達者で、先生」
「ありがとう、ウィギルも無事で」
 眼と眼を合わせ、頷き合う。無心なウィギルの瞳が真っすぐに香花を見つめていた。
 香花はウィギルに向かって深々と頭を下げると、二人の子どもの手を引いてウィギルが指したのは逆方向へと走った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ