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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第5章 永遠の別離

 光王は黙ったまま、幼子をあやすように香花の髪を撫で続ける。そのひどく優しい手つきに香花は戸惑った。むろん、光王が本当は優しい男だということはもう十分判っているけれど、それでも、今の光王はいつもの辛口で辛辣な彼とは、あまりに違いすぎる。
「―光王、やっぱり、私、あなたにちゃんと今までのお礼が言いたい。色々とありがとう」
 しおらしく言うと、光王が大仰に肩をすくめた。
「止せ止せ、お前にそんな殊勝な顔は似合わねえぜ、騒馬姫」
「ま、何ですって!」
 香花が再びいきり立つ。
 光王の笑い声が秋の澄んだ空気に弾けた。
                  (第一話・月下に花はひらく・終わり

 明日から第二話へ続く)

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