
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
光王はミリョンの手を掴んだまま、魂を奪われたかのように彼女の貌を凝視している。
重苦しいほどの沈黙が流れ、誰もが声を発することさえ躊躇われた。
「済まない」
光王はひと言詫び、ミリョンの手を放した。
彼はもう後はミリョンを振り返ろうともせず、庭を横切り家へと入っていった。
「ミリョンは香花の兄さんと知り合いなのか?」
傍らから景福が訝しげに訊ねた。
ミリョンがそっと首を振ると、景福は納得しかねるといった表情で首を傾げている。
香花もあの瞬間、確かに見た。光王の整いすぎるほど整った面に様々な感情がよぎっていったのを。もし、あれらの感情(おもい)に名を付けるとすれば、驚愕、不信、懐かしさ、切なさといった、あらゆるものが含まれていただろう。
それほどまでに複雑に入り乱れた想いが窺えた。
「ごめんなさい、多分、ミリョンさんが兄さんの昔の知り合いに似てたんじゃないかしら」
そう言ってから、香花は改めて自分の言葉が恐らく外れてはいないであろうことを悟った 。
重苦しいほどの沈黙が流れ、誰もが声を発することさえ躊躇われた。
「済まない」
光王はひと言詫び、ミリョンの手を放した。
彼はもう後はミリョンを振り返ろうともせず、庭を横切り家へと入っていった。
「ミリョンは香花の兄さんと知り合いなのか?」
傍らから景福が訝しげに訊ねた。
ミリョンがそっと首を振ると、景福は納得しかねるといった表情で首を傾げている。
香花もあの瞬間、確かに見た。光王の整いすぎるほど整った面に様々な感情がよぎっていったのを。もし、あれらの感情(おもい)に名を付けるとすれば、驚愕、不信、懐かしさ、切なさといった、あらゆるものが含まれていただろう。
それほどまでに複雑に入り乱れた想いが窺えた。
「ごめんなさい、多分、ミリョンさんが兄さんの昔の知り合いに似てたんじゃないかしら」
そう言ってから、香花は改めて自分の言葉が恐らく外れてはいないであろうことを悟った 。
