
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
―そんなことばかり言ってたら、一生結婚なんて、できないわよ。
―良いさ、どうせ、お前も貰い手がないだろうから、そのときは俺が仕方なく嫁にしてやる。
あまりの勝手な言い草に香花は呆れ果て、最早、反論する気にもならなかった。
と、すっかり宵闇の底に沈んだ一本の道を光王がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。この仕舞家は小高い丘の上にあり、村の入り口から続く一本道がずっとここまできているのだ。
緩やかな坂道を登ってくる光王が柵の前に佇む二人の珍客に眼を止めた。
最初に景福、次にミリョンと視線が動く。
異変はそのときに起きた。
ミリョンの貌をひとめ見た光王の切れ長の双眸が烈しい驚愕に見開かれたのだ。
およそ人前で感情を―しかも本音を見せることのない男のあまりの狼狽えぶりに、かえって見ている香花の方が心配になってしまったほどである。
光王が突如としてミリョンの細い手首を掴んだ。
「―!」
当のミリョンばかりか、景福も香花も誰もが声にならない声を上げた。
―良いさ、どうせ、お前も貰い手がないだろうから、そのときは俺が仕方なく嫁にしてやる。
あまりの勝手な言い草に香花は呆れ果て、最早、反論する気にもならなかった。
と、すっかり宵闇の底に沈んだ一本の道を光王がゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。この仕舞家は小高い丘の上にあり、村の入り口から続く一本道がずっとここまできているのだ。
緩やかな坂道を登ってくる光王が柵の前に佇む二人の珍客に眼を止めた。
最初に景福、次にミリョンと視線が動く。
異変はそのときに起きた。
ミリョンの貌をひとめ見た光王の切れ長の双眸が烈しい驚愕に見開かれたのだ。
およそ人前で感情を―しかも本音を見せることのない男のあまりの狼狽えぶりに、かえって見ている香花の方が心配になってしまったほどである。
光王が突如としてミリョンの細い手首を掴んだ。
「―!」
当のミリョンばかりか、景福も香花も誰もが声にならない声を上げた。
