
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第11章 謎の女
振り向くと、光王が薄闇の中にひっそりと佇んでいる。
「起きたの? すぐにお夕飯にするから、待ってて。今夜はチゲにしようと思って」
立ち上がりながら言うと、光王が小さく首を振った。
「悪いが、萬(マン)安(アン)のところでご馳走になってきた」
「そう」
香花は頷き、また座った。何だか肩透かしを喰らわされたような、妙な気分だ。
今日は光王の好物だから、歓ぶ貌を見られると思っていたのに―。
「お前はまだだろ?」
思い出したように訊ねてよこすのに、香花は薄く笑った。
「あまり欲しくないみたい」
それは嘘ではない。光王と一緒にチゲを食べられないのなら、どうでも良いと半ば自棄のような気分になってしまっている。
光王はそれきり黙り込んだ。細く開けたままの窓から覗く三日月を眺めるともなしに眺めている。
「光王」
呼びかけてしまったのは、自分でも予期せぬことだった。
「起きたの? すぐにお夕飯にするから、待ってて。今夜はチゲにしようと思って」
立ち上がりながら言うと、光王が小さく首を振った。
「悪いが、萬(マン)安(アン)のところでご馳走になってきた」
「そう」
香花は頷き、また座った。何だか肩透かしを喰らわされたような、妙な気分だ。
今日は光王の好物だから、歓ぶ貌を見られると思っていたのに―。
「お前はまだだろ?」
思い出したように訊ねてよこすのに、香花は薄く笑った。
「あまり欲しくないみたい」
それは嘘ではない。光王と一緒にチゲを食べられないのなら、どうでも良いと半ば自棄のような気分になってしまっている。
光王はそれきり黙り込んだ。細く開けたままの窓から覗く三日月を眺めるともなしに眺めている。
「光王」
呼びかけてしまったのは、自分でも予期せぬことだった。
