月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第13章 十六夜の悲劇
「何だかね、一人でじっとしていても、考えるのは昌福のことばかりなんだ」
景福によれば、サヒョン親方はここ数日は昌福の喪に服し、一切の興行を中止しているという。
「やることがないっていうのも、考え物かもしれない。身体を動かしてれば、とりあえず、その間は嫌なことも忘れられる」
景福が言いながら、そっと首からぶら下げている首飾りに触れる。恐らく無意識の仕種なのだろう。
香花はその場の沈んだ雰囲気を変えるつもりもあって、口にした。
「景福のその首飾り、素敵ね」
景福が意外な顔で自分の首許を見、首飾りを外す。
「初めてあなたがうちに来た日も、実はそう思って見てたのよ」
それは嘘ではない。明らかに翡翠と思われる大ぶりの玉は、旅暮らしの芸人の子どもにはふさわしくないものだった。
「これは、父の形見なんだ」
「まあ、そうなの」
香花は眼を見開いて、景福が差し出した手のひらを見つめる。
曲玉を象った翡翠は深い緑の輝きを放っている。香花も女だから、装飾品の類に興味はある。
景福によれば、サヒョン親方はここ数日は昌福の喪に服し、一切の興行を中止しているという。
「やることがないっていうのも、考え物かもしれない。身体を動かしてれば、とりあえず、その間は嫌なことも忘れられる」
景福が言いながら、そっと首からぶら下げている首飾りに触れる。恐らく無意識の仕種なのだろう。
香花はその場の沈んだ雰囲気を変えるつもりもあって、口にした。
「景福のその首飾り、素敵ね」
景福が意外な顔で自分の首許を見、首飾りを外す。
「初めてあなたがうちに来た日も、実はそう思って見てたのよ」
それは嘘ではない。明らかに翡翠と思われる大ぶりの玉は、旅暮らしの芸人の子どもにはふさわしくないものだった。
「これは、父の形見なんだ」
「まあ、そうなの」
香花は眼を見開いて、景福が差し出した手のひらを見つめる。
曲玉を象った翡翠は深い緑の輝きを放っている。香花も女だから、装飾品の類に興味はある。