月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第13章 十六夜の悲劇
「景福」
香花が微笑みかけると、景福が眩しげに眼を細める。
「随分と重そうだね。僕が持つよ」
「ありがと、助かるわ」
二人は並んでゆっくりと歩き始める。
「恵京さんの具合はどう?」
気になっていたことを訊ねると、景福は気弱な笑みを見せ、首を振る。
「いまだに床の上に起き上がるのがやっとだよ」
「そう」
香花もまた沈んだ気持ちで相槌を打ち、慌てて明るい声音で言い添えた。
「帰るときには卵を持って帰って。今朝、うちの鶏がまた卵を産んだのよ。きっと身体に良いと思うから、たくさん食べさせて上げて、滋養をつけなくちゃ」
「うん、ありがとう。香花」
景福の表情がわずかに明るくなった。
「突然訪ねてきて、邪魔しちゃったかな」
「ううん、全然。今は内職の方も落ち着いてるし、午前中は洗濯が終われば、後は他に何もすることはないから」
本当は内職の方の納期が迫っているのだが、むろん、口に出すつもりはない。
香花が微笑みかけると、景福が眩しげに眼を細める。
「随分と重そうだね。僕が持つよ」
「ありがと、助かるわ」
二人は並んでゆっくりと歩き始める。
「恵京さんの具合はどう?」
気になっていたことを訊ねると、景福は気弱な笑みを見せ、首を振る。
「いまだに床の上に起き上がるのがやっとだよ」
「そう」
香花もまた沈んだ気持ちで相槌を打ち、慌てて明るい声音で言い添えた。
「帰るときには卵を持って帰って。今朝、うちの鶏がまた卵を産んだのよ。きっと身体に良いと思うから、たくさん食べさせて上げて、滋養をつけなくちゃ」
「うん、ありがとう。香花」
景福の表情がわずかに明るくなった。
「突然訪ねてきて、邪魔しちゃったかな」
「ううん、全然。今は内職の方も落ち着いてるし、午前中は洗濯が終われば、後は他に何もすることはないから」
本当は内職の方の納期が迫っているのだが、むろん、口に出すつもりはない。