月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第14章 第4話【尹(ユン)家の娘】・夢見る老婦人
「ソンジュ」
理連の呼びかけに、ソンジュは我に返って、〝はい〟と応えた。
「先刻の娘について可能な限り、調べるように」
「と、仰せになりますと?」
予期せぬ命に、ソンジュはおどおどと訊ねる。理連もまた良人の徳義同様、使用人に対しては寛容ではあるが、愛娘を喪ってからというもの、理連は、まるでこの世の人ではないようになってしまった。正気を保っているときもあるが、一日の大半を心をどこ別の世界に遊ばせているように見える。
そんな理連を怖れ、使用人たちは必要以上に拘わるのを避けているような節がある。
理連の呼びかけに、ソンジュは我に返って、〝はい〟と応えた。
「先刻の娘について可能な限り、調べるように」
「と、仰せになりますと?」
予期せぬ命に、ソンジュはおどおどと訊ねる。理連もまた良人の徳義同様、使用人に対しては寛容ではあるが、愛娘を喪ってからというもの、理連は、まるでこの世の人ではないようになってしまった。正気を保っているときもあるが、一日の大半を心をどこ別の世界に遊ばせているように見える。
そんな理連を怖れ、使用人たちは必要以上に拘わるのを避けているような節がある。