月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第14章 第4話【尹(ユン)家の娘】・夢見る老婦人
奥さまでなくても、ソンジュでさえもが素花が死をいまだに嘘ではないかと思うときがあるのだ、一人娘を突如として喪った奥さまの心が哀しみで凍てついてしまったとしても、誰がそれを責められるだろう?
奥さまはお変わりになった。きびきびと屋敷内の諸事について女中頭に指示、何でも手早く抜かりなくこなしていた夫人ユン理蓮は、賢夫人として知られていた。
だが、素花が亡くなってからは、日がなボウとしたまなざしを宙に投げているだけだ。
お労しいお嬢さま、そして、もっとお気の毒な奥さま。
「お帰りなさい、私の可愛い娘」
老婦人はまるで彼女自身が少女に戻ったかのように、浮き浮きした弾んだ声音で呟く。
「そうそう、早速、仕立屋を呼んで、あの娘の新しい服を作らせなければ。髪飾りや装飾品も揃えましょう。もうすぐ婚礼を控えた娘なのですもの、金に糸目はつけずにね」
ソンジュと呼ばれた若い女中は、滲んできた涙をそっと袖で拭いた。女中だったソンジュの涙を優しく手ずからぬぐってくれたお優しいあの方はもうこの世にはいらっしゃらないのだ。
奥さまはお変わりになった。きびきびと屋敷内の諸事について女中頭に指示、何でも手早く抜かりなくこなしていた夫人ユン理蓮は、賢夫人として知られていた。
だが、素花が亡くなってからは、日がなボウとしたまなざしを宙に投げているだけだ。
お労しいお嬢さま、そして、もっとお気の毒な奥さま。
「お帰りなさい、私の可愛い娘」
老婦人はまるで彼女自身が少女に戻ったかのように、浮き浮きした弾んだ声音で呟く。
「そうそう、早速、仕立屋を呼んで、あの娘の新しい服を作らせなければ。髪飾りや装飾品も揃えましょう。もうすぐ婚礼を控えた娘なのですもの、金に糸目はつけずにね」
ソンジュと呼ばれた若い女中は、滲んできた涙をそっと袖で拭いた。女中だったソンジュの涙を優しく手ずからぬぐってくれたお優しいあの方はもうこの世にはいらっしゃらないのだ。