月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
その夜、光王が外に出てゆく気配はなかったけれど、香花は朝方まで悶々と寝付けなかった。香花と光王の暮らす家は村外れにぽつんと建っている。町から村へと続く一本道がなだらかな丘づたいに住まいまで伸びており、村長から格安で借り受けたものだった。
煮炊きのできる厨房と光王の部屋兼二人が寛ぐ空間となっている広い部屋、更に昔は納戸代わりに使っていたらしい小部屋の三間があるだけだが、香花にとっては十分な広さだ。ちなみに続きとなっている小部屋は、香花の寝室となっている。
翌朝、香花は殆ど一睡もできないまま起き出し、いつものように朝飯の支度を整えた。
朝飯の間も光王はずっと喋らず、香花と視線を合わせようともしなかった。
香花が仕事に出かける光王を送って表まで出かけてゆくのも、いつもの光景である。
「いってらっしゃい」
消え入りそうな声で言った香花を、光王がやるせなさそうな表情で見た。何しろ、そのときの香花は眼は泣き腫らして真っ赤だし、ろくに眠っていないせいで、眼の下には隈までできていた。
煮炊きのできる厨房と光王の部屋兼二人が寛ぐ空間となっている広い部屋、更に昔は納戸代わりに使っていたらしい小部屋の三間があるだけだが、香花にとっては十分な広さだ。ちなみに続きとなっている小部屋は、香花の寝室となっている。
翌朝、香花は殆ど一睡もできないまま起き出し、いつものように朝飯の支度を整えた。
朝飯の間も光王はずっと喋らず、香花と視線を合わせようともしなかった。
香花が仕事に出かける光王を送って表まで出かけてゆくのも、いつもの光景である。
「いってらっしゃい」
消え入りそうな声で言った香花を、光王がやるせなさそうな表情で見た。何しろ、そのときの香花は眼は泣き腫らして真っ赤だし、ろくに眠っていないせいで、眼の下には隈までできていた。