月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
いつしか昨夜の気まずい雰囲気もどこかに消えてしまっている。香花にしてみれば、光王が事実無根の噂話を信じ込んでいるだけだとしか思えなかったけれど、この話のお陰で仲直りできたようなものだから、かえって妙な噂に感謝したいくらいだ。
笑いながら言うと、光王が眉をつり上げた。
「俺は冗談を言ってるんじゃない。良いか、俺が他愛もないただの噂でここまで言うと思うか?」
つまりは、相当の危険があるに違いない話だろうから、迂闊にあの奥方には近づくなと言っているのだ。
香花は頷いた。ここは殊勝にふるまうしかなさそうだ。さもなければ、光王はまた香花を以前のように家に閉じ込めておくと言い出すかもしれない。前任の使道(府使)がたいそうな女好きで、美しい女がいると聞けば、攫って屋敷に連れ込むという噂が流れていたときは、香花に町へ出ることを禁じていたほどの過保護ぶりだったのだ。
笑いながら言うと、光王が眉をつり上げた。
「俺は冗談を言ってるんじゃない。良いか、俺が他愛もないただの噂でここまで言うと思うか?」
つまりは、相当の危険があるに違いない話だろうから、迂闊にあの奥方には近づくなと言っているのだ。
香花は頷いた。ここは殊勝にふるまうしかなさそうだ。さもなければ、光王はまた香花を以前のように家に閉じ込めておくと言い出すかもしれない。前任の使道(府使)がたいそうな女好きで、美しい女がいると聞けば、攫って屋敷に連れ込むという噂が流れていたときは、香花に町へ出ることを禁じていたほどの過保護ぶりだったのだ。