月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
話している中に、隣村の入り口近くに経つユン家の屋敷が見えてきた。
「それでは、私は男の人たちを呼んできます」
ソンジュがそう言って先に走って帰っていったが、実際、彼女が連れ戻った数人の下男たちは役にはあまり立てなかった。というのも、夫人の意向で、彼女はそのまま香花に背負われて屋敷に入りったからだ。流石にそこからは下男たちが代わり、理蓮を居室まで運んだ。
すぐに帰ろうとした香花はソンジュに呼び止められ、別室で待つように言われた。
案内されたのは部屋ではなく、庭の一角だった。四阿風の屋根がついただけの簡素な作りの建物は、周囲が吹き抜けになっていて、庭がよく見渡せる。板敷きで中央に丸い小さな円卓が置かれていた。
香花は見晴らしのよくきく場所に陣取り、しばらくは景色をのんびりと堪能した。すぐ向こうには薔薇の園が見える。ひと群れの薔薇の向こうに遠く屋敷の建物がかいま見えた。外から見るより、この屋敷も庭も相当に広いのだろう。そういえば、屋敷の入り口近くにも、薄紅色の薔薇が植わっていたと、香花はぼんやりと思い出す。
「それでは、私は男の人たちを呼んできます」
ソンジュがそう言って先に走って帰っていったが、実際、彼女が連れ戻った数人の下男たちは役にはあまり立てなかった。というのも、夫人の意向で、彼女はそのまま香花に背負われて屋敷に入りったからだ。流石にそこからは下男たちが代わり、理蓮を居室まで運んだ。
すぐに帰ろうとした香花はソンジュに呼び止められ、別室で待つように言われた。
案内されたのは部屋ではなく、庭の一角だった。四阿風の屋根がついただけの簡素な作りの建物は、周囲が吹き抜けになっていて、庭がよく見渡せる。板敷きで中央に丸い小さな円卓が置かれていた。
香花は見晴らしのよくきく場所に陣取り、しばらくは景色をのんびりと堪能した。すぐ向こうには薔薇の園が見える。ひと群れの薔薇の向こうに遠く屋敷の建物がかいま見えた。外から見るより、この屋敷も庭も相当に広いのだろう。そういえば、屋敷の入り口近くにも、薄紅色の薔薇が植わっていたと、香花はぼんやりと思い出す。