月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
「あなたの名前は?」
親しげに問う香花に、女中は肩を竦めた。
「ソンジュといいます。お嬢さまは少し変わってるんですね」
クスリと香花が笑った。
「いつも他人(ひと)からよく言われます」
香花はふと表情を引きしめ、背後の理蓮を気遣うように声をかけた。
「奥さま、ご気分はいかかですか? 痛みはどうですか」
夫人は応える気力もないようで、返事はなかった。
傍らを並んで歩くソンジュが代わりにに応える。
「奥さまはよく腰痛を起こされるんです。いつもお屋敷にいらっしゃるときなら、すぐによく効く煎じ薬をご用意できるのですが、生憎、今日は私がうっかりしていました」
ソンジュは夫人には聞こえないように小声で囁いた。
「大丈夫だと思います。そのお薬を召し上がりになれば、直に良くなられると決まっていますから」
「そうですか、それなら良いけど。でも、腰痛はこじらせると、後が長引くから、ちゃんと手当しなければ」
親しげに問う香花に、女中は肩を竦めた。
「ソンジュといいます。お嬢さまは少し変わってるんですね」
クスリと香花が笑った。
「いつも他人(ひと)からよく言われます」
香花はふと表情を引きしめ、背後の理蓮を気遣うように声をかけた。
「奥さま、ご気分はいかかですか? 痛みはどうですか」
夫人は応える気力もないようで、返事はなかった。
傍らを並んで歩くソンジュが代わりにに応える。
「奥さまはよく腰痛を起こされるんです。いつもお屋敷にいらっしゃるときなら、すぐによく効く煎じ薬をご用意できるのですが、生憎、今日は私がうっかりしていました」
ソンジュは夫人には聞こえないように小声で囁いた。
「大丈夫だと思います。そのお薬を召し上がりになれば、直に良くなられると決まっていますから」
「そうですか、それなら良いけど。でも、腰痛はこじらせると、後が長引くから、ちゃんと手当しなければ」