月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
女中のソンジュが門の外まで送ってくれた時、香花はよほど夫人の心の病について訊ねてみようかと思った。だが、結局、止めた。
よく教育された女中は、けして自らが仕える屋敷内の内情をぺらぺらと喋ったりはしない。また、迂闊に喋って、そのことが主人に知れれば、その女中自身が酷い折檻を受けることになる。
見たところ、ソンジュは口が固く、信用のできる賢い娘のようだ。香花が訊いたからといって、けして主家の恥じになるようなことは言わないだろう。
とにかく、今からでも遅くはない。もうこれ以上、あの夫人とは拘わり合いにならない方が良い。香花は漸く、光王の言葉は正しかったのだと納得するに至った。
その日、香花は光王にどうしても隣村のユン家の屋敷に行ったことを話せなかった。いつもなら、夕方、仕事を終えて帰ってきた光王に色々とその日の出来事を話すのだが、半月前の約束があるだけに、話しそびれてしまったのだ。
後々、そのことをどれだけ後悔することになるか、知りもせずに。
よく教育された女中は、けして自らが仕える屋敷内の内情をぺらぺらと喋ったりはしない。また、迂闊に喋って、そのことが主人に知れれば、その女中自身が酷い折檻を受けることになる。
見たところ、ソンジュは口が固く、信用のできる賢い娘のようだ。香花が訊いたからといって、けして主家の恥じになるようなことは言わないだろう。
とにかく、今からでも遅くはない。もうこれ以上、あの夫人とは拘わり合いにならない方が良い。香花は漸く、光王の言葉は正しかったのだと納得するに至った。
その日、香花は光王にどうしても隣村のユン家の屋敷に行ったことを話せなかった。いつもなら、夕方、仕事を終えて帰ってきた光王に色々とその日の出来事を話すのだが、半月前の約束があるだけに、話しそびれてしまったのだ。
後々、そのことをどれだけ後悔することになるか、知りもせずに。