月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
夢の終わり
十月に入ったまもないある日、香花はいつものように、隣の朴家に産みたての卵を届けに出かけた。その帰り道、少しだけ脚を伸ばして、例の石榴の樹がある場所まで行ってみた。
数本仲好く並んで植わっている石榴は相変わらず、紅いよく熟れた実を重たげに実らせている。香花はまず最初の一個を道端の観音像に供え、それから卵の入っていた籠に収穫した石榴を入れていった。小さな籠はすぐに山盛りになった頃、香花はそろそろ引き返そうと踵を返した。
今夜の夕飯には少し変わったデザートが並ぶことになりそうだ。光王の愕いた顔、歓ぶ顔が眼に浮かぶ。果肉をよく煮て、蒸し饅頭の中に入れても美味しいだろう。色々と心躍る空想が飛び交い、香花は少し離れた後ろからついてくる脚音に気付かなかった。
十月に入ったまもないある日、香花はいつものように、隣の朴家に産みたての卵を届けに出かけた。その帰り道、少しだけ脚を伸ばして、例の石榴の樹がある場所まで行ってみた。
数本仲好く並んで植わっている石榴は相変わらず、紅いよく熟れた実を重たげに実らせている。香花はまず最初の一個を道端の観音像に供え、それから卵の入っていた籠に収穫した石榴を入れていった。小さな籠はすぐに山盛りになった頃、香花はそろそろ引き返そうと踵を返した。
今夜の夕飯には少し変わったデザートが並ぶことになりそうだ。光王の愕いた顔、歓ぶ顔が眼に浮かぶ。果肉をよく煮て、蒸し饅頭の中に入れても美味しいだろう。色々と心躍る空想が飛び交い、香花は少し離れた後ろからついてくる脚音に気付かなかった。