
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
その日、光王の帰宅までの時間が香花には随分と長く感じられた。いつもなら何ということはない刻の流れがひどくのんびりとしたものに思え、香花らしくもない焦りを憶えたのだ。
香花は夜まで気もそぞろに光王を待った。
茜色の夕陽が西の空の端を染め始める頃になっても、光王は帰らない。常ならば、とっくに帰っている時間だ。
香花は念のため、家の周囲をぐるりと取り囲む柵の外まで出てみたけれど、待ち人の姿はいっかな見えなかった。
家の前からは、緩やかな斜面が見渡せる。黄昏刻の陽光が一面の秋桜畑を夕陽の色に染め上げていた。まるで熟れた柿を彷彿とさせる巨大な太陽が地平の空に隠れてゆくのを眺めながら、香花は溜息をついた。
諦めて家の中に戻ってからほどなく、チリリと表の門に取り付けた呼び鈴が鳴った。光王が帰ってきたのだ。
香花は夜まで気もそぞろに光王を待った。
茜色の夕陽が西の空の端を染め始める頃になっても、光王は帰らない。常ならば、とっくに帰っている時間だ。
香花は念のため、家の周囲をぐるりと取り囲む柵の外まで出てみたけれど、待ち人の姿はいっかな見えなかった。
家の前からは、緩やかな斜面が見渡せる。黄昏刻の陽光が一面の秋桜畑を夕陽の色に染め上げていた。まるで熟れた柿を彷彿とさせる巨大な太陽が地平の空に隠れてゆくのを眺めながら、香花は溜息をついた。
諦めて家の中に戻ってからほどなく、チリリと表の門に取り付けた呼び鈴が鳴った。光王が帰ってきたのだ。
