
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
香花の身が心配だから、家の中に閉じ込めて外には一歩も出したくない、と。
あの科白を聞いたときには、冗談ではない、自分は幼児ではないのだからと半ばその過保護ぶりに憤慨したものだ。しかし、光王の身に危険が迫っていると知った今は、香花もまた、かつての光王が考えていたのと同じことを考える。
大切な男を家に閉じ込めて、外には出したくない。どんな危険が待ち受けているかも判らない町へなど行かせたくない―と思う。
他人が聞けば、鼻で嗤って済まされるような他愛ないことなのだろうが、今、同じ立場に置かれてみて、香花は光王が心底から自分を心配してくれていたのだと理解できたのだった。
降り注ぐ陽差しはきつく容赦ないが、身の傍を時折、吹き抜けてゆく風はどこかひんやりとしている。その風の涼しさが、季節はもう秋なのだと告げているようだ。
風が吹く度に、薄紅色の秋桜がさわさわとかすかな音を立てて揺れる。潤んだ瞳に、香花の大好きな花の色が滲む。
香花は花の海に囲まれて、いつまでもその場に立ち尽くしていた。
あの科白を聞いたときには、冗談ではない、自分は幼児ではないのだからと半ばその過保護ぶりに憤慨したものだ。しかし、光王の身に危険が迫っていると知った今は、香花もまた、かつての光王が考えていたのと同じことを考える。
大切な男を家に閉じ込めて、外には出したくない。どんな危険が待ち受けているかも判らない町へなど行かせたくない―と思う。
他人が聞けば、鼻で嗤って済まされるような他愛ないことなのだろうが、今、同じ立場に置かれてみて、香花は光王が心底から自分を心配してくれていたのだと理解できたのだった。
降り注ぐ陽差しはきつく容赦ないが、身の傍を時折、吹き抜けてゆく風はどこかひんやりとしている。その風の涼しさが、季節はもう秋なのだと告げているようだ。
風が吹く度に、薄紅色の秋桜がさわさわとかすかな音を立てて揺れる。潤んだ瞳に、香花の大好きな花の色が滲む。
香花は花の海に囲まれて、いつまでもその場に立ち尽くしていた。
