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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

「私、何だか胸騒ぎがしてしまって。もしかしたら、都から来た役人じゃないかとも考えたんだけれど、光王はどう思う?」
「俺が大人しくなって、もう三年以上になるんだ、今更、俺を捕まえようなんて酔狂な奴もいないだろう」
 光王はまるで他人事(ひとごと)のように淡々と言うと、立ち上がった。
「ちょっと出かけてくる」
 香花は狼狽えた。たった今、物騒な話をしたばかりだというのに、夜遅くに一人でどこに出かけるというのだろう。
「待って。光王、その両班が都に帰るまでは、しばらく大人しくしていた方が良いんじゃないのかしら」
 相手が何を思い企んでいるか知れないだけに、ここは出方を見た方が良いと思ったのである。
 しかし、光王は軽く肩をすくめた。
「そこまで神経質に警戒する必要もないんじゃねえのか」

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