
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
男がハッと眼を見開き、光王を切なげな眼で見つめた。
「判った。今日のところは、これで帰ろう。だが、光王。私は諦めないぞ。そなたが私と向き合ってくれるまで、私は何度でもまたここに来る」
男は立ち上がり歩きかけたが、ふいに脚をよろめかせた。光王にここまで素気なく扱われたことに、やはり内心、衝撃を受けたのかもしれない。
「大丈夫ですか?」
「ああ、私なら大丈夫だ。済まないが、光王のことをよろしく頼む」
男が小声で囁くのが耳に入ったらしい。
光王が喚いた。
「余計なことを言うなッ」
最後まで言い終わる前に、男は出てゆき、扉が静かに閉まった。
「畜生」
座り込んだ光王はふいに立ち上がり、まるで行き場を失った檻の中の隈のようにうろうろと所在なげに狭い部屋の中を歩き回った。
「判った。今日のところは、これで帰ろう。だが、光王。私は諦めないぞ。そなたが私と向き合ってくれるまで、私は何度でもまたここに来る」
男は立ち上がり歩きかけたが、ふいに脚をよろめかせた。光王にここまで素気なく扱われたことに、やはり内心、衝撃を受けたのかもしれない。
「大丈夫ですか?」
「ああ、私なら大丈夫だ。済まないが、光王のことをよろしく頼む」
男が小声で囁くのが耳に入ったらしい。
光王が喚いた。
「余計なことを言うなッ」
最後まで言い終わる前に、男は出てゆき、扉が静かに閉まった。
「畜生」
座り込んだ光王はふいに立ち上がり、まるで行き場を失った檻の中の隈のようにうろうろと所在なげに狭い部屋の中を歩き回った。
