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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第19章 訪問者

「―光王、大丈夫?」
 香花が光王に声をかけると、光王がいきなり香花の手を掴んだ。荒々しく引き寄せられ、光王の男らしい匂いが香花を包み込む。
 香花は眼を見開いた。光王が香花をゆっくりとその場に押し倒し、上から覆い被さってきたのだ。
「大丈夫かと心配するのなら、今、ここで俺を慰めてくれ。持って行き場のない俺のこのやり切れなさをお前の身体で晴らさせてくれないか」
 光王の骨太の指が香花のチョゴリの前紐にかかる。光王の指先は怖ろしいほど手慣れている。こんな時、香花は光王が過去にどれほどの女と褥を共にしたのかを思い知らされ、哀しくなる。
 紐はあっさりと解かれ、光王は乱暴な仕草で上着の前をひろげる。布を巻いただけの胸は、その上からでも豊かに膨らんでいる。光王はそのふくよかな胸に躊躇うことなく、顔を押しつけた。
「―」
 香花は湧き上がってくる恐怖と当惑を懸命に抑え込んでいた。

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