
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
香花はやるせない想いで、光王の悲壮な孤独の滲んだ背中を見つめた。
そして、漢陽から半月かけてここまで旅してきた彼の父親の心中にも想いを馳せる。
光王の怒りも言い分ももっともなことだ。妓生が両班の若さまと晴れて結ばれることはなくても、二十八年前、彼の父が母親に対してもう少し誠意ある対応をしていれば、光王の抱(いだ)く父や両班階級に対する想いも随分と変わったものになっていただろう。
光王が人を憎みながら、今日まで生きてくる必要もなかったはずだ。
だが、人は変わるのも確かだ。この二十八年という、けして短くはない年月、あの男がどのような想いを抱えて生きてきたのかを、光王は知らない。
香花は、あの男の眼を思い出す。父を嫌う息子光王に生き写しの双眸。あの男を町で初めて見た時、光王に似ていると咄嗟に思ったのも、ここに訪ねてきた時、懐かしさに似た感情を抱いたのも―、すべては当然といえば当然といえた。
そして、漢陽から半月かけてここまで旅してきた彼の父親の心中にも想いを馳せる。
光王の怒りも言い分ももっともなことだ。妓生が両班の若さまと晴れて結ばれることはなくても、二十八年前、彼の父が母親に対してもう少し誠意ある対応をしていれば、光王の抱(いだ)く父や両班階級に対する想いも随分と変わったものになっていただろう。
光王が人を憎みながら、今日まで生きてくる必要もなかったはずだ。
だが、人は変わるのも確かだ。この二十八年という、けして短くはない年月、あの男がどのような想いを抱えて生きてきたのかを、光王は知らない。
香花は、あの男の眼を思い出す。父を嫌う息子光王に生き写しの双眸。あの男を町で初めて見た時、光王に似ていると咄嗟に思ったのも、ここに訪ねてきた時、懐かしさに似た感情を抱いたのも―、すべては当然といえば当然といえた。
