
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
そろそろ九月も終わる。家の中にいては判らないけれど、こうして外に一歩出てみると、秋の深まりを膚で感じることができた。群れ咲く秋桜の間から、侘びしいような虫の音がかすかに響いてくる。日毎に弱々しくなってくる陽差しの中で、終わろうとする季節にか細い虫の声を聞いていると、何とはなしに物哀しくなってくる。
秋や冬よりも、夏の方が良いと思ってしまうのは、香花が夏生まれのせいかもしれなかった。
―俺は夏の暑いのだけはご免だな。少しくらい寒くても、やっぱり冬の方が良い。
そう言う光王は、やはり冬に生まれたという。まあ、生まれた季節だけで好き嫌いが決まるわけではないだろうが。
光王。そのひとの名前を心の中で呟いただけで、心がふるえる。こんなにもあの男に心を奪われているとは、香花自身、考えてもいなかった。
秋や冬よりも、夏の方が良いと思ってしまうのは、香花が夏生まれのせいかもしれなかった。
―俺は夏の暑いのだけはご免だな。少しくらい寒くても、やっぱり冬の方が良い。
そう言う光王は、やはり冬に生まれたという。まあ、生まれた季節だけで好き嫌いが決まるわけではないだろうが。
光王。そのひとの名前を心の中で呟いただけで、心がふるえる。こんなにもあの男に心を奪われているとは、香花自身、考えてもいなかった。
