月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
光王の眼から熱い雫が溢れ出し、陽に灼けた頬をつたい落ちてゆく。その涙は香花の衣服をも濡らした。
「泣きたいだけ泣くと良いわ。これまでずっと我慢してきたんだもの」
香花は幼い子どもに言い聞かせるように言い、ゆっくりと歌い続ける。
そう、光王はいつも孤独だった。母を喪い、大勢の仲間たちとつるむようになっても、〝天下の大義賊〟と謳われ、大勢の手下を率いるようになっても、彼の心は常に空虚であったに違いない。
気の遠くなるほどの長い間、彼はたった一人で重い孤独を抱え、耐えてきたのだ。泣きもせず、喚きもせず。ひたすら、母を死に追いやった父や、父の属する両班という特権階級の人々を憎みながら。
せめて今だけ、自分の腕の中で泣きたいだけ泣くことで、その彼の哀しみが万分の一でも軽くなるのならと、香花は思わずにはいられない。
彼の耐えてきた壮絶な孤独に想いを馳せる時、やはり、光王と彼の父が心を通わせ合うことは土台、無理な話なのかと思ってしまう。
「泣きたいだけ泣くと良いわ。これまでずっと我慢してきたんだもの」
香花は幼い子どもに言い聞かせるように言い、ゆっくりと歌い続ける。
そう、光王はいつも孤独だった。母を喪い、大勢の仲間たちとつるむようになっても、〝天下の大義賊〟と謳われ、大勢の手下を率いるようになっても、彼の心は常に空虚であったに違いない。
気の遠くなるほどの長い間、彼はたった一人で重い孤独を抱え、耐えてきたのだ。泣きもせず、喚きもせず。ひたすら、母を死に追いやった父や、父の属する両班という特権階級の人々を憎みながら。
せめて今だけ、自分の腕の中で泣きたいだけ泣くことで、その彼の哀しみが万分の一でも軽くなるのならと、香花は思わずにはいられない。
彼の耐えてきた壮絶な孤独に想いを馳せる時、やはり、光王と彼の父が心を通わせ合うことは土台、無理な話なのかと思ってしまう。