月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
香花は愕いて、顔を上げる。
光王が泣いている―。
いつも冷静で、およそ理性を失ったことのない男、陽気で人懐こいくせに、どこか世の中を冷めた眼で見つめているこの男が泣いている―?
「光―王」
香花は堪らず、光王の逞しい身体を抱きしめた。光王が甘えるように香花の胸に顔を押しつける。
「良い匂いだ。香花、お前はお袋と同じ匂いがする。こうしていると、お袋を思い出すよ」
香花は先刻、光王が歌っていた歌を思い出しながら、ゆっくりと歌った。
蒼い空の天の川
白い丸木舟には桂の木一本
うさぎ一匹 帆柱も立てず 棹もなく
よくぞ進むな 西の国へ
光王が泣いている―。
いつも冷静で、およそ理性を失ったことのない男、陽気で人懐こいくせに、どこか世の中を冷めた眼で見つめているこの男が泣いている―?
「光―王」
香花は堪らず、光王の逞しい身体を抱きしめた。光王が甘えるように香花の胸に顔を押しつける。
「良い匂いだ。香花、お前はお袋と同じ匂いがする。こうしていると、お袋を思い出すよ」
香花は先刻、光王が歌っていた歌を思い出しながら、ゆっくりと歌った。
蒼い空の天の川
白い丸木舟には桂の木一本
うさぎ一匹 帆柱も立てず 棹もなく
よくぞ進むな 西の国へ