月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
その時、意外な人物が言葉を発した。
〝違う〟。
そのひと声に、香花は眼を見開く。
「違う」
もう一度、父が苦渋に満ちた声で言った。
突然の介入に、光王も香花もハッとして父親を見た。
「何が―どう違うんだよ? え、あんたがお袋を棄てたっていう事実には変わりはないだろうが、ええ? あんたは、懐妊したと嬉しげに打ち明けたお袋に、腹の子が本当に自分の子なのかとそう言ったんだろ」
「そなたの言うとおりだ。私がヨンウォルを棄てたことは確かに、言い逃れのできない事実だ。だが、私は彼女にそのようなことを言ってはおらぬ」
光王の父がひと言、ひと言を噛みしめるように言う。
「この話は、できるならば私一人の胸に畳んでおこうと思っていたが」
彼はそう言いおいて、ゆっくりと喋り始めた。
〝違う〟。
そのひと声に、香花は眼を見開く。
「違う」
もう一度、父が苦渋に満ちた声で言った。
突然の介入に、光王も香花もハッとして父親を見た。
「何が―どう違うんだよ? え、あんたがお袋を棄てたっていう事実には変わりはないだろうが、ええ? あんたは、懐妊したと嬉しげに打ち明けたお袋に、腹の子が本当に自分の子なのかとそう言ったんだろ」
「そなたの言うとおりだ。私がヨンウォルを棄てたことは確かに、言い逃れのできない事実だ。だが、私は彼女にそのようなことを言ってはおらぬ」
光王の父がひと言、ひと言を噛みしめるように言う。
「この話は、できるならば私一人の胸に畳んでおこうと思っていたが」
彼はそう言いおいて、ゆっくりと喋り始めた。