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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第20章 父と子

 光王の母ヨンウォルの許に熱心に通っていた当時、光王の父―成(ソン)真悦(ジンヨル)には婚約者がいた。むろん、両班家の多くの子女のように、親の決めた許嫁だった。
 真悦は親にも内緒で妓房に通っていたのだが、やがて、それが真悦の両親ばかりか、許嫁の父親にも知れるところとなった。むろん、妻の父は真悦の不行跡に大いに激怒し、許嫁はいささか大仰なほど親の前で泣き崩れた。
 その婚約者、つまり今の彼の妻の乳母が妓房に乗り込んでいったのがすべての事の発端になる。
 当時、彼の父は上訴して国王の怒りをかい、退けられていた。妻の父は礼(イエ)曹(ジヨ)参(チヤン)判(パン)の重職にあり、国王の信も厚かった。そこで、真悦の父は妻の父に国王へのとりなしを頼んだのだ。従って、妻(当時の婚約者)の実家に、成家は逆らえない状況にあった。
 彼に恋慕する娘可愛さに、妻の父はヨンウォルと別れて、即刻、我が娘を娶れと迫った。さもなければ、真悦の父を見放す、口利きもしないと脅され、真悦は窮地に陥れられたのである。

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