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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第20章 父と子

「―帰ってきてくれぬか」
 その問いかけに対する言葉は、ついに最後まで聞けなかった。
 光王は何も応えず、ただ両手を組んで、その場にひれ伏した。二十七年の生涯で初めて出逢った父へ息子の心からの拝礼であった。
 この時、香花は確信した。
 切れかかっていた二人の縁の糸は、辛うじて繋ぎ止めることができたのだ―、と。

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