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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第21章 月下にひらく花

  月下にひらく花 

 二十七年ぶりにやっと和解した父を光王はそのまま町まで送っていった。真悦によれば、明日の朝、夜明けと共に漢陽に向けて出発するのだという。
 戻ってきた光王と夕飯の膳に向かいながら、香花は笑った。
「どうせなら、明日の朝も見送りにいってきたら良いのに」
「いや、それはもう良い。言いたいことはすべて伝えておいたから、俺の気持ちは親父にも伝わってるはずだ」
 光王は、あれほど頑なに拒んでいたのが嘘のように、さらりと〝親父〟と口にする。それが香花は心底嬉しかった。
「俺なりに考えたんだが」
 飯を半ばほど食べたところで、唐突に光王が口を開いた。
 いつになく真面目な彼を見て、ふと香花の胸に不安が兆した。

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