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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第21章 月下にひらく花

 とうとう別離の瞬間(とき)が来たのだと思って、覚悟しなければならない。光王を愛しているから、大切だと思うからこそ、微笑んで見送らなければいけないと思うものの、いざそのときが来れば、自分にできるかどうかは判らなかった。
 その時―、香花は光王の母ヨンウォルの気持ちが初めて判ったような気がした。
 愛しい男に自ら背を向けたヨンウォル。光王の母は成真悦を愛していたから、その将来の邪魔にならないようにと自ら身を退いた。
 差し出された男の手を振り払い、背を向けなければならなかった彼女の心中は察するに余りある。どれほど辛かったことだろう―。
 思わず熱いものが込み上げてしまい、香花は慌ててうつむいた。
「そう、そうよね。光王はいつまでもこんなところにいて良い人じゃない。良かったじゃない、あなたには帰るべき場所があって、待ってる人たちがいる。だったら、その人たちの許に帰るべきよ」

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