月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第21章 月下にひらく花
理想とする社会が実現した時、恐らく、今はまだ十六歳の香花ですら、もう生きてはいまい。それほどに連綿と続いてきたこの国の土壌―封建的な考え方を作り替えるのは難しく、根気のいる作業なのだ。
考えてみれば、明善は初恋の人でもあり、香花の人生に一つの生きる目標―指針を与えてくれた師でもあった。
亡き人の想い出にしばし浸っている香花は、光王のひと言で現(うつつ)に返った。
「どうして、そうなるんだ?」
え、と、香花が光王の顔をまじまじと見つめる。
「俺が一人で都に帰るといつ言った?」
抑揚のない声に、香花は眼を瞠った。
光王が怒っている? でも、一体、何故―?
彼が怒る理由が香花にはさっぱり判らない。
考えてみれば、明善は初恋の人でもあり、香花の人生に一つの生きる目標―指針を与えてくれた師でもあった。
亡き人の想い出にしばし浸っている香花は、光王のひと言で現(うつつ)に返った。
「どうして、そうなるんだ?」
え、と、香花が光王の顔をまじまじと見つめる。
「俺が一人で都に帰るといつ言った?」
抑揚のない声に、香花は眼を瞠った。
光王が怒っている? でも、一体、何故―?
彼が怒る理由が香花にはさっぱり判らない。