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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 母亡き後、香丹はしばしば金家を訪(おとな)い、何くれとなく父と香花二人だけの暮らしや屋敷内のことについて気を配ってくれた。少々お喋りが過ぎるこの叔母のことを〝何ふり構わず尻尾を振る女狐〟と露骨に嫌悪する者たちもいないではない。そんな連中は大抵は金氏や叔母が嫁した婚家のように下級官吏の夫人たちで、両班とはいえ、高官の奥方たちからは格下に見られ相手にもされないような家門の女たちばかりであった。
 叔母は今の立場を―大臣の奥方たちとも親しく付き合える立ち位置―を自分の力で掴み取ったのだ。むろん、その裏には大枚の金を使い、数々の貢ぎ物をし、お世辞の一つどころか二つも三つも口にしただろう。その行為は確かに心ある人から見れば〝尻尾を振る女狐〟に見えるのかもしれないが、香花は、叔母のしたたかさをむしろ強さだと思う。

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