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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

「良いのですよ。いつかも言ったでしょう。私は実家の再興も大切だけれど、何よりも、あなたの幸せがいちばんなの。あなたが礼(イエ)曹(ジヨ)参(チヤム)知(チ)の家の若嫁になってくれて、私は掛け値なしに嬉しいのです。これで、ひとまずは亡くなられた姉上や義兄(あに)上にも顔向けができると歓んでいます。ごめんなさいね、私こそ、心ないことを言いました。責任感の強いそなたのことだもの、他家に嫁いだことをどれほど心苦しく思っているか、判り切ったことなのに」
「叔母上さま―」
 大きな黒い瞳に涙を滲ませた香花の髪を、香丹がそっと撫でた。
「女は惚れた男に嫁いでこそ、幸せというもの。私はむしろ、そなたが自らの意思でその幸せを選び取ったことを誇りに思いますよ。恐らく姉上がご存命だったとしても、娘であるそなたに同様のことを言ったでしょう。人生は一度きりしかない。ならば、ずっと先になって長い人生を振り返った時、ああすれば良かったとか、こうすれば良かったのにと後悔するようなことだけはさせたくないのです。私の可愛い香花、幸せにおなりなさい」

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