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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 もっとも、立派な女輿が屋敷の門前に横付けされたのだから、相応の身分の女人だとは屋敷内の者たちも思ったではあろうが、ただ香花の叔母とのみ告げて、身分の一切は明かしてはいなかったのである。
 香丹が成家にいたのは四半刻ほどにすぎなかった。それでも早々に立ち上がった叔母を香花が心細げに見やると、香丹は笑った。
「あら、まあ。見かけはどこから見ても、立派な成家の若奥さまなのに、そのような泣き出しそうな顔をするなんて、香花もまだまだ子どもだこと」
「叔母上さま、また、お越し頂けますか」
 縋るようなまなざしを向けられ、香丹は微笑んで首を振った。

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