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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 叔母が帰った翌朝早々、香花は姑に呼び出された。
「お義母(オモニ)上さま、お呼びでございましょうか」
 義母の居間の外―廊下から遠慮がちに声をかけると、かなり間を置いて返事が返ってくる。
「お入り」
 尊大な物言いはいつものことだ。香花が両開きの戸を静かに開けると、部屋には二人の女人がいた。
 鶯色の座椅子にゆったりと座った上座の女性が沈(シム)妙(ミヨ)鈴(ジヨン)、成(ソン)真悦(ジンヨル)の奥方である。座椅子と同色のチョゴリと落ち着いた紺色のチマを穿いたその姿は、四十六歳という実際の年齢よりはやや老けて見える。顎の尖った面長の顔立ちに釣り気味の細い眼は、まるで狐だ。痩せぎすで全体的に鋭角的なためか、きつい印象を対する者に与える。

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