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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 妙鈴の傍ら―やや下がった場所に、まだ若い女性がいた。こちらは、派手な色のきらびやかな衣服を纏って、美しく化粧している。いささか膚が浅黒いのが難点といえば難点ではあるが、まず一般的にいえば、美人の範疇に入るだろう。年の頃は、香花よりは二、三歳上といったところか。
「何かご用でございますか?」
 香花が下座に座って丁重に問いかけると、妙鈴が傲岸に頷いて見せた。
「そなたに引き合わせたい者がいる」
 言いおくと、傍らを見、鷹揚に頷いた。先刻、香花に向けた冷たいまなざしとは全く別人のような優しい笑みがその面に浮かんでいる。
 この夫人は、ふた月前に初めて対面したときから、こうだった。まるで薄汚れたものでも見るかのような蔑みのこもった冷淡な視線で香花を見下す。この視線に晒される度、香花は身が縮むような想いがいつもするのだ。

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