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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第22章 第6話【漢陽(ハニャン)の春】・再会

 傍らの若い女が発した声に、妙鈴は我が意を得たりと頷く。
「それもそうだ。妓生であれば、手練手管で男を誑かし骨抜きにするのなぞ、いとも容易い赤児の手をひねるようなものであろう。それにしても、賤しい遊び女風情を我が成家の嫁になど、旦那(ヨンガン)さまも何をお考えになっているのやら」
 不服そうに独りごちる妙鈴に、女が微笑みかけた。
「義母上さま、それに、私は客などではございません。今日より、こちらのお屋敷で暮らす身でございますもの」
 おお、そうであった、と、妙鈴は頷く。
「香花、この方に挨拶せよ」
 どうして、この若い女と自分とでは、こんなにも向ける表情も声色も違うのだと訝るほどのきついまなざしをくれる。
「この人は今日から、そなたにとっては主筋の方になる」

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